~4の日~
「ねぇねぇ、今日もヴィグのお家にあそびに行きたいんだけど」
「うん、いいけど……平気?」
「まだ行き方おぼえてないから、連れてって。」
もうほとんど覚えたけど、今日はヴィグにつれてってもらうことにした。覚えたら、突然行って、びっくりさせてやるんだ。
「ヴィグはこのおうち、すぐに慣れたの?」
「おいらは昔から、このおうちしか知らなかったから……」
「ふぅん……」
ヴィグのお家、ちょっと小さいけど、ひみつきちみたい。いろいろ置いてあるけど、おこられないのかな?
「今日もおかし持ってきたんだよ。一緒に食べようよ。」
「え、うん、ありがと……アティもおやつに豆とか食べるんだ、これ、植えたら生えてくる?」
「やだなもう、これはジェリービーンズっておかしだよ。おいしいよ?ほら」
「……うん、甘い」
ヴィグはジェリービーンズを知らなかったみたい。今日も新しいおかしを教えた。おいしかったみたい。よかった!
「いつものおかしも、ヴィグのおうちで食べるとおもしろいね。」
「よそのおうちって、おもしろいよね」
ヴィグのおうちで食べるときは、一緒のお皿で食べたりできて、おもしろいな。
ちょっと砂浜であそんで、公園までヴィグといっしょで、そこからお別れ。いつもヴィグとあそんでるけど、今日も楽しかった。もっと遊びたいな。
今日は、ヴィグのおうちまでの道を、ちゃんと覚えた。もう、ひとりでも行けそう!
~5の日~
今日はひとりでヴィグのおうちの近くまで行ってみた。いつもの公園にヴィグがいたから、見つからないようにしながら、こっそり。
ちゃんと、ヴィグのおうちまで行けた。これでもう大丈夫!
~6の日~
今日は公園に行った。今日もヴィグがいた。あそべるかな?
「ヴィグ??」
「……あ、アティ、おはよう」
「おはよう、じゃないだろ、寝てたの?」
「うん、多分」
「こんなとこで寝てたら風邪ひいちゃうよ。」
今日はぼくのおうちで遊んだ。あったかい紅茶を一緒に飲んだ。あったまったかな?それから、お庭でキャッチボールしたり、ヴィグが虫をつかまえてきたりした。よくはねるやつ。びっくりした。でも今日も楽しかった!
~7の日~
今日もまたいつもの公園にいった。
ヴィグ、また寝てないかな?
「ヴィグ!」
「あ、アティ、あそぼ!」
「うん!すごいねヴィグ、ぼくの一声で起きちゃうの。」
「音はよくきこえるから」
「ぼくより耳わるそうなのに。」
ヴィグの耳って、どこできこえてるんだろう?
「ねぇねぇ、今日はここでおかしたべよう?」
「うん……あ、今日のはクッキーだ。ずいぶん大きいけど」
「そうだよ!大きいから、大きいチョコが入ってるの。」
「ほんとだ、いっぱい入ってる……外で食べるのも、おもしろいね。」
「ピクニックに来たみたいだよね。あ、そうだ、今度は一緒にピクニックに行こうよ。」
「うん、お弁当用意しなくちゃ。」
ヴィグと、ピクニックに行く約束をした。サンドウィッチを一緒にたべたいな、今日の大きいクッキーも、おいししそうにたべてた、これも一緒にまたたべたいな。たのしみ!
あれ?日にちを決めるのをわすれちゃった。
~8の日~
今日は天気がよくなくなるみたい。こんなに天気がいいから、ヴィグがまた寝ちゃってるんじゃないかな?
でも、今日からちょっと、おうちでおるす番をしてなくちゃいけない。そのうち天気もわるくなってきちゃった。次はいつヴィグと遊べるかな。
~9の日~
今日は、昨日の天気が悪くなってから、そのまんまだった。
今日もおるす番。ピクニックはいつにしようかな。天気が悪いのも、明日までかな?
~10の日~
今日も、すごい雨だった。こんな中でお出かけしたら、かぜひきそう。おるす番も今日までだから、がまん。
今日のおやつはロールケーキだった。巻いてあるのをちょっともどしたりしたら、きたなくなった。おるす番じゃないときに見つかったらおこられそう。もうやらないでおこう。
~11の日~
昨日もちょっと天気がわるいまんまだった。ロールケーキでいたずらしたから、おこられたのかも?天気がおこるわけないけど。
今日はちょっと久しぶりに、公園に行ってみた。でも、ヴィグはいなかった。天気もよくないからかな?
そろそろ天気もよくなって、ピクニックにいけるかな?
~12の日~
今日はちょっとくもり。今日も公園に行ってみたけど、ヴィグはいなかった。ちょっとさむくなってきたから、おうちに帰った。ヴィグは元気かな?
~13の日~
今日もちょっとくもり。そろそろ、木の実がとれるかな?ピクニックに持って行きたいな。
ちょっと心配になって、夕方くらいにヴィグのおうちに電話をしてみたけれど、だれもでない。おるすなのかな?
~14の日~
今日は、ちょっと心配で、ヴィグのおうちに行ってみた。おもしろいジュースももってきた。
どうしてこの家には鍵がかかってないんだろう?
「おじゃまします……」
コンコン
「ヴィグ〜、いる?」
「……」
あれ、いないのかな?
「ヴィグ〜……あけていい?」
「アティ?いまあける」
ヴィグは、ぼくを部屋に入れてあわててドアをしめた。なんでだろう?
「やっとひとりでここまでこれたよ。最近遊んでなかったから、来ちゃった。」
「うん、アティ、今日はすごい服……虫がついてる」
「え?あ、これね、新しいお洋服だよ。これ、虫じゃなくてかざりだよ。ちょっとリボンが多すぎるかなって気がするんだけど……」
ついこの前、よくはねる虫でびっくりしてたの見てたのに。久しぶりだから、面白いことでも言おうとしたのかな?
「ヴィグが電話にもでなくって、心配だったんだけど、平気?」
「うん、天気がよくないから、出ないだけ」
「そう?……今日ね、おもしろいジュースもってきたの。一緒に飲もう?」
「うん?うん」
「これね、中のやつも食べられるの。」
「アティ、おいらもさすがに虫は食べないよ」
「やだな、これは虫じゃなくて、タピオカっていうんだよ。これ、タピオカジュースってやつなんだって。」
虫だって言われたら、なんだかちょっといやになってきちゃった。
あれ、いつもなら食べてくれるんだけど、これは苦手なのかな?
「あれ、ヴィグこれあんまり好きじゃないかな?ごめんね?」
「ううん、ちょっと……ごめん」
「好き嫌いはぼくもするもん、おこられるけど……ぐあいでも悪い?」
「ううん、平気、アティは帰らなくて、平気?また、雨が降るかも」
「え?ああ、そっか、そうだね、じゃあ……また明日、来るかも。」
「気をつけて、そこあけると、なんかいるから」
「ん?ちっちゃい虫?ここのはだいぶなれたから平気だよ。今日はひとりで帰らせて!またね〜」
帰りも一人で帰ることにした。本当に天気が悪くなったら、ヴィグがかわいそうになっちゃう。天気が悪くて外に出たくなかったのに。
ちょっとぐあいがわるそうだったけど、本当に平気なのかな?
~14の日~
今日はちょっといい天気。公園に行ってみたけど、ヴィグはいなかった。そのままヴィグのおうちにいくことにした。
コンコン
今日はすぐにドアをあけてくれた。
「ア、アティ……?」
「あ、ヴィグ!」
いきなりドアをしめられた。なんで?
「あ、ちょっと、なんでしめるのさ」
なんだろう、ヴィグはびっくりしたような顔をしていたような。
コンコン
「ヴィグ〜」
「あけて〜」
コンコン
「どうしたの?」
今日は調子でもよくないのかな?
ドアも開けられなくされちゃった。何かあるならことわってくれたらいいのに。
ちょっとイライラしながら帰った。
~15の日~
今日はちょっときげんがよくない。なんで急にドアをしめられたんだろう?なんで何もいってくれなかったんだろう?
~16の日~
昨日はちょっときげんがよくなかったけど、やっぱりなんだか心配になってきた。今日はいつもの公園に行ってみたけど、やっぱりヴィグはいなかった。天気もこんなにいいのに、どうしちゃったんだろう?
おうちまで行ってみたけど、中には入らないで帰った。
~17の日~
今日も公園に行ってみた。やっぱりヴィグはいなかった。ぼくが公園に行かないときって、ヴィグもこんな感じなのかな。
なんだか、ヴィグのおうちのほうから、よくない音がした気がした。
おそるおそるヴィグのおうちに行ってみた。
中に入っても開けてもらえないし、ちょっと窓から見てみよう。
久しぶりに、外で眠ってるヴィグをみた。
「ヴィグ?!なんでこんなとこで寝てるの?」
いつもなら、ぼくの一声で起きるのに。
「ヴィグ?ねぇねぇ、ヴィグ、おきて?」
ヴィグの部屋の窓があいてる。
「ヴィグ……?」
あそこから、落ちてきたみたいだった。
「ヴィグ!おきて!!」
あんなところから落ちてきたら、どこか怪我してるのかもしれない
「ヴィグ!おき……おきろよぉ……」
ヴィグ、寝てるんじゃなくて、うごけないのかもしれない
「ヴィグ〜……どこか痛い?うごけない?」
どうして、返事もくれないんだろう
どうしよう、??
しばらくそばにいて、そしたら、やっとヴィグが目をあけた。
「ヴィグ!」
「大丈夫?どこか痛くない?」
「声は出る?うごける??」
ヴィグはなんだかとってもやさしい顔をした。
「あ、アティ、おかえり」
「あ!……ちがうよ、ここ、ヴィグのおうちだよ」
「うん?……そっか」
「大丈夫ヴィグ?落ちたの?」
「ううん、みんな、連れて帰ってきたの。アティも、木も……」
「……なんの話?」
「アティ、あの、すごいねむい……おやすみ……」
ぼくがいるそばで、ヴィグはまた寝ちゃったんだ。
それもとってもしあわせそうに。